金曜シネマ倶楽部(世界の黒澤)

「天国と地獄」(1963年)


日経新聞の今月の連載読み物「私の履歴書」は山崎努氏を取り上げている
同欄で同氏が本作についての思い出を語るエピソードに興味を引かれ、実際に観てみた

製靴会社の常務である権藤に「あなたのこどもをさらった」という電話がかかる
しかし、実際に誘拐されたのは住み込み運転手の子だった
こどもを間違えたことに気づいた誘拐犯は、それでも権藤に身代金を要求し・・・

黒澤明監督の現代劇を観たのは初めてである
前半は権藤の苦悩と葛藤を丁寧に描き、後半は警察の緻密な捜査活動をリアルに描いていて、見応えがある
身代金受け渡しのシーンは、公開後に模倣犯が出るくらい巧妙で秀逸だ
山崎努氏はラストシーンの自分の演技に満足していないというようなことを「私の履歴書」で書いていたが、当時の黒澤監督はとても気に入っていたという逸話も残されている
興味のある方は、ぜひご覧あれ

ところで、参院選の圧勝という「天国」を味わった現政権だが
様々な問題が吹き出して支持率急落の今は、差し詰め「地獄」といったところか?
いやいや、そんなに深刻な事態とは考えていないだろうね
国民はなめられているからね

2022年8月26日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(金田一さん、事件です)

「犬神家の一族」(1976年)


先日、島田陽子氏が亡くなった

ご冥福をお祈りします

というわけで、彼女の代表作のこの映画

信州の大財閥犬神佐兵衛が死去した
彼が残した遺言状が一族の相続争いに火をつけ、凄惨な殺人事件が次々に発生する
奇怪な事件の真相に名探偵金田一耕助が挑む・・・

何十回も観ているのに、しばらく経つとまた観たくなる映画というものがある
「ゴッドファーザー」とか「ルパン三世カリオストロの城」とか
この作品もそのひとつ
間違いなく、日本映画の傑作のひとつと言えよう(個人的感想)
この後、悪魔の手鞠唄、獄門島、女王蜂、病院坂の首縊りの家と一連のシリーズが制作されたが「犬神家の一族」は群を抜いている(2006年のリメイク版は論外)
湖の中から足が二本突き出ているシーンはあまりにも有名

おっといけない、また観たくなってきた

ところで昨年、角川映画45周年を記念して本作の4Kデジタル修復Ultra HD Blue-ray版が発売された(定価16,280円)
オリジナルネガフイルムから引き出された精細な映像やクリアな音声が史上最高品位のフォーマットで楽しめるらしい

おっといけない、買ってしまいそうだ

3年前、中山道望月宿で出会った本作「那須ホテル」のロケ地
2022年7月29日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(今年のラジー賞を総なめか)

「ザ・ロストシティ」(公開中)


1980年代に流行った冒険ロマンティックコメディというジャンル
たとえば「ロマンシング・ストーン」シリーズとか
というわけで、同じような匂いがしたので観てみたこの作品

小説家のロレッタは、謎の実業家に誘拐され、南の島に連れて行かれる
古代都市の秘宝のありかを調べさせるためだった
彼女の小説の表紙モデルのアランは、彼女を救出するため、強力な助っ人と一緒に島に乗り込む
しかし・・・

主役のロレッタ役がサンドラブロック、アラン役がチャニングテイタム
謎の実業家役がダニエルラドクリフで、強力な助っ人役がブラッドピット
なんとも豪華な俳優陣だが、肝心の内容が・・・
1980年代だったら多少はウケたのかもしれないが
今の時代にはかなり厳しいのではないだろうか
前回紹介した「トップガン マーヴェリック」とは異なり
「何も考えずにスカッとするにはもってこいの映画」とも
「1980年代の映画が好きな人には、おすすめ」とも言いがたい、相当に微妙な作品である

ごめん、サンドラ

でも「デンジャラス・ビューティー」(2001年)は嫌いじゃないからね

2022年7月8日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(待ってました!トムクルーズ!)

「トップガン マーヴェリック」(公開中)


2年前のこのブログで「コロナの影響で公開が危ぶまれている」とご紹介したこの作品
ようやく公開になったので、映画館へ行ってきた

アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校「トップガン」
そこに伝説のパイロットであるマーヴェリックが教官として戻ってきた
某国のウラン濃縮基地を攻撃するミッションを遂行するためのパイロットを育成するためだ
果たして、ミッションは成功するのか・・・

主演のトムクルーズを一躍スターにした1986年公開の「トップガン」の続編である
本作品を鑑賞するに当たっての注意事項は次のとおり

前作は必ず観ておくこと
必ず映画館の大スクリーンで観ること
「ミッション:インポッシブル」と間違えないこと
「スターウォーズ(エピソード4)」と間違えないこと
「最高だったよ!」とあまり大きな声では言わないこと
以上

蒸し暑くなってきたこの季節
何も考えずにスカッとするにはもってこいの映画である

1980年代の映画が好きな人には、おすすめ!

2022年6月24日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(ジャミラは泣けるよね)

「シン・ウルトラマン」(公開中)


リアルタイムで観ていたのは「帰ってきたウルトラマン」だが、初代「ウルトラマン」も再放送で観た世代である

というわけで、興味本位で映画館に行ってみた

謎の巨大生物が次々と日本を襲う
通常兵器が通用しないカイジュウに手を焼くカトクタイ
そこへ、銀色の巨人が突如現れて、カイジュウと戦い始める・・・

1966年テレビ放送開始の「ウルトラマン」を観ていた世代に向けた映画なのだろう
なぜなら、懐かしい怪獣や宇宙人が、現代にも通用するような設定で登場し、
郷愁に駆られるからだ
ただし、それ以上でもそれ以下でもない感じだ(個人的感想)
やはり、1966年の「ウルトラマン」の面白さを越えることはできないのだと思う
それは、時代背景や生活様式が違うからという当たり前の理由と、こどもの時に見たゆえのヒーローに対する単純な憧れのせいだろう
「あんまりリアルに作られちゃうとウルトラマンではなくなってしまう」という違和感かもしれない
あなたはどう感じましたか?

ところで、同じ製作スタッフで「シン・仮面ライダー」も公開予定とのこと
この調子でいくと、「シン・キカイダー」だの「シン・ゴレンジャー」だの次々と出てくるかもよ
(「シン・ロボコン」ならちょっと見てみたいかな?)

2022年5月27日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(あなたはどっち派)

「コーダ あいのうた」(公開中)


今年のアカデミー作品賞は大方の予想通りだったようだ

というわけで、その受賞作

高校生のルビーは、耳の不自由な両親と兄の4人家族
家族でひとりだけ耳が聴こえるルビーは、小さい頃から家族の「通訳」だった
新学期に合唱のクラスを選択したルビーは、顧問の先生に才能を見いだされ、都会の音楽大学への進学を勧められる
耳が聴こえるルビーが頼りの両親は彼女が家族と離れて都会へ行くことに反対する
歌いたいという夢を家族に理解してもらいたいルビーだが、彼らはルビーの歌声を聴くことができない・・・

2月18日に紹介した「エール!」のリメイク作品である
オリジナルの「エール!」では農家だった家業が漁師に変更されており、耳が不自由なことによる仕事の困難さと健聴者の娘を頼りにしなければならない切実さが、より際立つ作りとなっている
また、きょうだいが弟から兄に変更されているが、兄の葛藤や責任感が感じられる点は本作の優れているところではないか
しかし、オリジナルとリメイクを見比べた結果、個人的にはオリジナルの「エール!」の方に軍配を上げたい
確かに本作の方が口当たりが良いという感じだが、オリジナルの方がパワーがあったという印象だ
興味があったら、見比べてみて

ところで、受賞作よりもビンタ事件に話題をさらわれた感がある今年のアカデミー賞授賞式
そう言えば、2017年には作品賞の封筒を間違えて誤った作品を発表するということもあったなぁ
来年はどんなハプニングが起こるやら

2022年4月22日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(「007/ドクター・ノオ」が観たくなる1本)

「ゴヤの名画と優しい泥棒」(公開中)


地上波が映らないテレビがで売れているらしい

というわけで、英国の公共放送受信料トラブルが発端のこの作品

舞台は1961年の英国
ロンドンのナショナル・ギャラリーからゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた
高齢者の孤独を救うために公共放送BBCを無料で受信できるように活動していたケンプトン・バントン
経済力はないが心優しい夢想家の彼は、ゴヤの名画の身代金で高齢者の受信料を肩代わりする計画を思いつく
果たして、その結果は・・・

実話に基づく作品だという
前半はケンプトンの奔放で奇想天外な行動に不快感を抱く人もいるかもしれないが
公判は、もとい、後半は彼の行動に共感できるようになるのではないだろうか
実は夫婦の物語というところがこの作品の妙と言えよう
殺伐とした話題が多い昨今、ちょっと優しい気持ちになれるかもしれない映画だ

おすすめ!

ところで、「007/ドクター・ノオ」では「ウエリントン公爵」を盗んだ犯人は別の人物という小ネタが描かれているので要チェック!

2022年3月25日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(カンバーバッチが怖い・・・)

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(Netflixで公開中)


アカデミー賞授賞式の前に駆け込み鑑賞が続く

というわけで、作品賞にノミネートされているこの作品

アメリカ西部で牧場を経営しているフィルとジョージ
威圧的な兄フィルに対して、心優しい弟のジョージ
ジョージは、宿屋の未亡人ローズと結婚し、その息子ピーターの面倒もみるようになる
フィルは、ローズとピーターに対して冷たい態度で接していたが・・・

10年前に「プロメテウス」という映画を事前の情報なしに観て
「えっ!そういう映画だったの?」と驚いたことがあるが
本作もそのような感じだ
ジャンルとしては、サスペンスということになるのかな?
好き嫌いがはっきり分かれる内容かもしれない
これ以上は言うまい

心して観るべし

さて、作品賞受賞の可能性だが
難しいかな?
(英国アカデミー賞では作品賞を受賞したらしいけど)

2022年3月18日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(果たして受賞なるか?)

「ドント・ルック・アップ」(Netflixで公開中)


いよいよ日本時間3月28日に今年のアカデミー賞授賞式が行われる

というわけで、作品賞にノミネートされているこの作品

天文学博士課程のディビアンスキーは、地球に接近する彗星を発見する
彼女の指導教授であるミンディ博士が軌道を計算すると、その彗星が6か月後に地球に衝突し壊滅的な被害を起こすことが判明する
二人から連絡を受けたNASAのオグルソープ博士は状況を確認、分析し、ホワイトハウスにその旨を報告する
そして、3人はホワイトハウスで合衆国大統領と面会することになるが・・・

現代社会の危うさを痛烈に描くブラックコメディである
監督のアダムマッケイは、地球温暖化による気候変動が進む事態に対して知人が言った「小惑星が地球に衝突しようとしているのに、誰も何とも思っていないようなものだ」という言葉から、この作品のアイデアが生まれたという
なるほど、メリルストリープ演じる大統領が、「地球温暖化はフェイクニュースだ」と言っていた前大統領に見えてくるのはそういうことか
ミンディ博士役のレオナルドディカプリオもなかなか良い
なお、エンドロールの後にもワンシーン残っているので、観るときはご注意を!

さて、作品賞受賞の可能性だが
十分あると思うよ
(本命は「コーダ あいのうた」らしいけど)

2022年3月11日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita

金曜シネマ倶楽部(前回の続き)

「ウエスト・サイド・ストーリー」(公開中)


今年のアカデミー作品賞にノミネートされている「ウエスト・サイド・ストーリー」は往年の名作を巨匠スティーブンスピルバーグがリメイクしたものだが
なぜ50年後の今、スピルバーグがリメイク版を作ったのかが分からない
観れば分かるのかな?
(ここまでが前回)

観たけど分からなかった
確かに、1961年版よりもストーリーが分かりやすくなっている
しかし、リアリティを追求したためか、作品の持つ雰囲気が無くなってしまったという感じである
もともとブロードウェイミュージカルだった作品なのだから、中途半端なリアリティは要らなかったのではないかな?
カメラワークもこの作品には合わない感じがした
すべて個人の感想なので悪しからず
ごめん、スピルバーグ
(アカデミー作品賞の受賞はないという予想で)

2022年3月4日 | カテゴリー : 映画 | 投稿者 : morita